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遺言で相続税対策をする場合の注意点
1 遺言が相続税に影響する場面
現在の法律では、遺言を作成したとしても、相続税が軽減されるわけではないという説明がなされることがあります。
確かに、現在の法律では、遺言を作成したこと自体をもって、相続税を軽減するという制度が設けられているわけではありません。
上記の説明は、このことを述べているものになります。
もっとも、状況次第では、遺言を作成した結果、円滑に相続税を軽減する特例を利用することができるようになり、結果的に相続税が軽減されることとなることがあります。
今回は、遺言を作成することによる相続税対策について、説明したいと思います。
2 小規模宅地等の特例を利用できるようにすること
⑴ 小規模宅地の特例とは
小規模宅地等の特例は、主として、被相続人が居住用または事業用に用いていた土地については、限度面積まで、評価額を8割または5割まで軽減する特例です。
小規模宅地等の特例を用い、土地の評価額を大きく減額することができれば、相続税を大きく減額することができる可能性があります。
⑵ 小規模宅地の特例を利用するための条件
小規模宅地等の特例を用いるにあたっては、一定の条件を満たす必要があります。
遺言との関係で注意したいのは、どの相続人が土地を取得するかによって、特例を利用できたりできなかったりするということです。
たとえば、被相続人が居住用に用いていた土地については、被相続人に配偶者か被相続人と同居していた相続人が取得した場合に、特例を利用することができます。
被相続人の配偶者も同居していた相続人もいない場合には、居住用の土地を所有していない相続人についても、一定の条件を満たせば、特例を利用することができる可能性があります。
このように、小規模宅地等の特例を用いることができる相続人は、かなり限定されています。
このため、特例を用いることを想定して遺言を作成するにあたっては、特例を用いることができる相続人が土地を取得することとすべきことに注意する必要があります。
同様に、被相続人が事業用に用いていた土地についても、被相続人の事業を引き継いだ相続人が土地を取得した場合に限り、特例の適用を受けることができます。
このような場合には、被相続人の事業を引き継ぐことを予定している相続人に、土地を相続させるとの内容の遺言を作成することを検討すべきでしょう。
3 二次相続を考慮した遺言とすること
相続税では、配偶者の税額軽減という制度があり、配偶者が相続をする場合、1億6000万円または法定相続分までは、相続税がかからないことになっています。
したがって、例えば父母と2人の子供という4人家族、父の財産は1億円で、父が亡くなったというパターンを想定すると、「すべての財産を母に相続させる」こととした場合、相続税はかかりません。
しかし、だからといって、安易に「すべての財産を配偶者に相続させる」との遺言を書くべきではありません。
なぜなら、母が亡くなり、子供が相続(二次相続)することになった際に、子供が支払う相続税が高額になってしまう可能性があるからです。
二次相続の際には、一次相続と比較して基礎控除額を決める法定相続人の数が減ること(上記の例ですと、父の相続時には、母と2人の子供の3人が法定相続人となりますが、母の相続時には2人の子供の実が法定相続人になります)、一次相続で亡くなった配偶者の財産を引き継いだ方(上記の例でいえば、母)自身の財産も二次相続の対象になることから、二次相続の方が相続税が高額になりやすいのです。
遺言を作成する際には、亡くなった時点でどのくらいの財産になるか、どの順番で相続が発生するかなどを明確に想定することは難しいですが、二次相続にかかる相続税も考慮した遺言を作成することをおすすめします。
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