相続税の申告が必要な場合
1 課税される遺産の総額が基礎控除額以下である場合
課税される遺産の総額が基礎控除額以下である場合には、相続税の申告をする必要はありません。
課税される遺産の総額の中には、亡くなった時点での相続財産のほか、生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産と扱われるものや、相続開始前3年以内に行われた贈与も含まれます。
ただし、みなし相続財産と扱われるものにも非課税枠が設定されており、法定相続人の数に500万円を乗じた非課税枠を差し引いた額を算入することになります。
基礎控除額は、3000万円に法定相続人の数に600万円を乗じた金額を加えることで計算ができます。
なお、法定相続人には養子も含まれますが、他に実子がいて、複数の養子がいる場合には、1人のみ上記の計算に加えることができます。
このように計算された課税の対象となる遺産の総額が基礎控除額を超えない場合には、相続税の申告の必要はありません。
実際には、これら以外の控除などが利用できる場合には、相続税の申告の必要がないケースもありますので、税理士にご相談いただきたいと思います。
2 相続税の納付の必要がなくても相続税の申告が必要な場合
相続税の納付の必要がなくても相続税の申告が必要であるという場合がありますので、注意が必要です。
相続税においては、一定の条件を満たす土地について、小規模宅地等の特例という制度を利用することができます。
これを利用した場合には、土地の評価額を5割から8割まで減額することができます。
ただし、この制度を適用して土地の評価額を減額した結果、課税の対象となる遺産の総額が基礎控除額以下となったとしても、相続税の申告が必要なくなるわけではなく、申告自体は必要ですので注意してください。
この場合には、相続税額を0円として申告することになります。
そのほかに、配偶者控除という制度を利用する場合も同様です。
配偶者が取得した財産額が1億6000万円までであるか、法定相続分までである場合には、配偶者には相続税が課税されません。
この配偶者控除を利用した結果、支払わなければならない全体の相続税額が0円となった場合にも、申告自体はする必要があります。
3 申告が必要かどうかは税理士にご相談を
このように、相続税を支払わなければならない場合なのかどうか、申告する必要があるのかどうかは非常に複雑になっています。
この点の判断を失敗したことで思わぬ不利益を受けないように、相続税の申告が必要かどうかは、税理士にご相談いただきたいと思います。
東海市で相続を行われた方は、当事務所までご相談ください。
税理士の選び方
1 税理士を選ぶポイント
どうやって税理士を選べばいいのかわからない。どのように依頼すればいいのかわからないという方も多いと思います。
税理士に何を求めるのかによって、税理士を選ぶポイントも変わってくるのですが、重要なポイントは、以下のようなものであると思います。
2 最新の税制改正に対応しているか
税法は、毎年、税制改正があり、重要な課税のルールが変化していきますし、新しい課税ルールも創設されていきます。
例えば、相続税についてのルールが変更になったにも関わらず、その変更を知らずに相続税申告を進めてしまうと、税務調査で指摘され、過少申告加算税や延滞税を支払う必要がでてくる恐れがあります。
そうならないためにも、毎年の税制改正に対応している税理士を探す必要があります。
3 柔軟に対応してくれる税理士か
現在、税理士の平均年齢は、60歳以上です。
年齢が高いベテラン税理士は、経験豊富で、引き出しが多く、頼りになりそうです。
しかし、年齢が高いと電子化がなかなかできておらず、業務の処理が遅かったり、申告書を電子申告するではなく、紙で提出していたりする税理士すらいらっしゃいます。
また、電話又はFAXのみの対応で、メールが使えない、WEB会議システムが使えない、クラウドに対応していないといったこともあります。
そのため、柔軟な対応をしてもらえず、うまく意思疎通が図れない可能性もあります。
ですので、税理士を選ぶ時には、どのような対応をしてもらえるのか、どのようなシステムを使っているのかをしっかりと確認する必要があります。
4 実際に会うことも大切
以上のポイントが税理士を選ぶ際には、気を付けなければなりません。
また、信頼できる税理士か、誠実な税理士かは、一度会ってみないとわからないこともありますので、まずは軽い気持ちで、税理士事務所にお問い合わせすることをお勧めします。
相続税の相談をするタイミング
1 相談のタイミングは2つ
相続税の相談をするタイミングは、大きく分けて2つあります。
1つは、生前のうちに、相続税を軽減するための活動をしたり、相続税の納税資金を用意するといった対策をするときです。
2つ目は、相続発生後に、相続税の申告を行うときです。
いずれのタイミングでも共通しているのが、「相談をするなら、できるだけ早い方がいい」という点です。
なぜ、相談が早い方がいいのかについて、ご説明します。
2 生前の対策は早いほど効果が高い
生前に、相続税の軽減をしようとする場合、生前贈与という手法が用いられることがあります。
贈与を行っても、一定額までであれば、贈与税が課せられません。
その制度を利用して、どんどん生前贈与をして、遺産額を減らすという手法が考えられます。
10年や、20年をかけて生前贈与をしていけば、遺産の額を大幅に減らすことができるため、時間をかければかけるほど、相続税の軽減効果は高くなります。
3 争族の防止も早い方が効果が高い
相続税の対策も重要ですが、ご家族が遺産の分け方を巡ってもめてしまわないように対策しておくことも重要です。
最も有効な手段として、遺産の分け方を指定してしまうという方法があります。
しかし、高齢になった時に遺産の分け方を指定しても、相続発生後に「高齢や認知症のせいで、判断能力が低下していたはずだ」といった主張がなされる可能性があります。
そのため、判断能力の低下を疑われないように、できるだけ早い時期から、遺産の分け方を指定しておく必要があります。
そのような、遺産の分け方の指定を考えるきっかけをつくるためにも、早い時期から相続税の相談をすることが大切です。
4 相続発生後は時間がありません
相続税の申告は、10か月以内という期間制限があるため、急ぐ必要があります。
この10か月の間に、役所で必要な書類を集め、遺産の内容を調査し、遺産の分け方まで決めなければなりません。
そのため、10か月というのは、決して余裕がある期限ではありません。
相続発生後は、すぐに相続税の相談をしましょう。